上野学園中学校・高等学校様にて、5月から約2か月間に渡って行われた課外授業「宇宙プロジェクト」に参加させていただきました!
当初お話をいただいたときは「趣味で活動している団体にできることは何か」と考えあぐねることもありましたが、先生方の思いは熱く、たくさんのご協力をいただきながら、リーマンサットだからこそお伝えできることを模索しつつ講座づくりを進めました。
本講座の生徒さんたちにお伝えしたいことは、
「できることじゃなくてやりたいことをやってみよう!!」
これを聞くと「そんなの当たり前じゃない?」と思われる方も、逆に「できないことをやったって無駄じゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
でもリーマンサットの活動の中ではとても大切にしていることなのです。「何をしたいか」をまずは考える、そして「それを実現するためには何が必要か」を考える。がんばってる人がいればみんなで助けあう。
すると「ワクワク」は広がっていきます!!新しいことが始まっていきます!!
課題は「宇宙機のミッションを考えよう」
本講座は中一から高三まで有志11人を縦割りで二つのグループに分け、グループワーク形式で行われました。2チームに与えられた課題は「宇宙機のミッションを考えよう!」です。
「宇宙機」とは聞きなれない言葉かもしれません。ロケットなどで打ち上げられ、大気圏外で使用される飛行体を指します。
宇宙機には役割や目的があります。その中の一つ人工衛星には気象を観測したり、地球上の遠隔地と通信を行ったりといった役割があります。また国際宇宙ステーションや宇宙探査機も宇宙機に含まれます。
チャレンジ講座のテーマはこの宇宙機のミッション(=役割)を考えること。
リーマンサットは「身近なものを宇宙につなげる」活動をしています。このミッション選定においても、普段興味・関心をもっていることに視点をおいて、宇宙機を使うことで叶えたいことが実現できたり、課題が解決できたりしないか検討していきます。
ミッションアイデアのブレインストーミング
ミッションを考えるに当たって、まずは自分たちの好きなこと・関心ごとの洗い出しをするのには「偏愛マップ」という手法をとりました。自分のことを「書いて」お互いに紹介しあうことで、視覚的にグループ内で共有を行います。
この作業によりチームビルディングを行った上でそれぞれのチーム名を決定しました。
「ゼウスサット」「Zero-G 」の2チームです!
どちらも何かが起きそうな、何かを象徴するような素敵な名前です。
さて、個々の関心事がわかったあとはミッションに関するブレインストーミングを行っていきます。
「ブレインストーミング」とはグループワークにおいて自由な発想で意見を出し合い、新しいアイデアを生み出すための手法です。以下のようなルールで進めていきます。
1.他人のアイデアを否定しない
2.どんな発想のアイデアも受け入れる
3.質よりも量が大事である
4.結合と改善を行う
これらは日常的に話し合いを行う上でとても大切なことです。が、やはり「やりたいことではなく今できそうなこと」に縛られるのはよくあること。誰しも失敗したくないですし、大人になるほど「正解」を知りたがるかもしれません。でもここに可能性はありません。
「宇宙」を題材にすることで、誰もやったことのない、前例のないことに対して中高生たちがどんなアイデアをだし、どのような話し合いをしてくれるのでしょうか?
実は予想をはるかに上回るたくさんのユニークなアイデアが出たのです。これにはリーマンサットメンバー一同驚かされました。
一例をあげると
・月の上で遠隔操作鬼ごっこ
・月の鉱石を採取して売る
・月に橋をかける
・宇宙に絵を書く
・宇宙でけん玉をする
上記は出たアイデアの一部なのですが、すでに捨てがたく、どのようなミッションなのか詳しく聞きたいものばかりです!
頭に思い描くものを言葉に出すことは大事だと思います。そして言葉にすることができる場所も必要ですよね。
中間発表とミニ講座
どれも捨てがたいとはいうものの、最終発表に向けてこれらのアイデアの中からグループ内で1つのミッションを選定しなければなりません。
このころには高校三年生を中心に、活発に議論が行われるようになっていきました。気配りのできる高学年に、積極的に意見を出す低学年の生徒さんたち、いいチームができあがってきました。
そして、とうとう2グループそれぞれのミッションが決定しました!
チームゼウスサット 「タイムカプセル」
チームZero-G 「FireWork in Space」
中間発表で報告されたあと、さらに詳細がチーム内で話し合われ、最終発表に向けて資料作成を行います。
学年が違うメンバーの集まりですが、学校で個々で所有しているタブレットを積極的に活用し、着々と準備が進んでいったようです。
一方、グループワークの合間にリーマンサットのエンジニアによるミニ講座も挟まれ、講座終了後も居残って興味深げに質問をする生徒さんたちの姿も見受けられました。
RSP-01のモック(模型)を用いた超小型人工衛星のつくりについて
衛星の「運用」について
宇宙機の姿勢制御と自作ドローン
最終発表
いよいよそれぞれのチームによる最終発表です!
●チーム「ゼウスサット」
「タイムカプセル」は月面に剣型の宇宙機を刺し、後世の人たちに現代人からのメッセージを残すというミッションです。
人々の歴史や文化を伝えるというよりは自分たちの「思い」を伝えたいというはっきりとした目的を持ちつつも、剣型タイムカプセルを抜くときに勇者のような姿を想像するというユニークな面ももっています。
この「剣型」には他にも意味があるのです。
実は中間発表のときには形状は異なるものでした。
タイムカプセルというものは通常土の中に埋まっていて、数十年後掘り起こすイメージがあります。ところが月面で同じことをしようとすると、低重力のためうまく埋めることができないのではないかという意見がでてきました。
ならば埋めてしまわなくてもいいのではないか、なんなら宇宙機の一部が月面から飛び出ていてもよい、それならあえて柄を出しておいて引き抜くシーンも楽しもうということから剣型のフォルムが生まれました。見事な逆転の発想です。
●チーム「Zero-G 」
ミッションは 「FireWork in Space~宇宙で花火を打ち上げよう~」です。
こちらのチームは18にも及ぶたくさんのミッションアイデアをジャンル分けした上で投票による上位4つを選考し、最終的に1つに絞り込みました。
衛星とその中に詰め込まれた石が大気圏への再突入により花火となり、国際宇宙ステーション搭乗中の宇宙飛行士と地上の我々で同時に鑑賞することを目指すというミッションです。
注目すべきは「どのように実現するか」を具体的に検討したこと。
まず宇宙機には、リーマンサットでも開発をしている10センチ四方のキューブサット(超小型人工衛星)を選びました。その中に詰める石の大きさや個数も計算し、逆噴射により高度と速度を落とすシステムや、キューブサットの蓋が開き宇宙空間へ石が放出される機構まで、図を用いてしっかりと説明してくれました。
「開いた蓋を閉じる機構は必要ないか」というリーマンサットメンバーからの質問に「宇宙デブリ(宇宙ゴミ)にならないように、筐体自体が燃え尽きるように設計するので閉める必要がない」との答えがかえってきたことからも、細部にまで検討がなされたことが伝わってきました。
この二つのミッションは、後日、リーマンサット内の全体定例ミーティングでも紹介させていただきました。
リーマンサットメンバーからは、アイデアの斬新さはもとより、否定しないブレストをまとめあげたことや発表資料の完成度の高さに対する驚きの声があがりました。またさらなる課題も意見としてでました。
みなさん、発表お疲れ様でした!
最終発表を終え、リーマンサットからは記念に両チーム名が入ったオリジナル缶バッチをプレゼントしました。
講座としては解散したあとも生徒たちは残って、一人ずつ感想を話してくれました。
印象に残ったのは「学年を超えたチームで一つのことをやり遂げたことが嬉しかった」「今まで話したことなかった講座メンバーとも校内で会うと話すようになった」という感想です。
微力ながら、この講座がみなさんのなにかしらのきっかけになっていればとても嬉しいです。
私たちリーマンサットメンバーもいろいろな気づきをいただき、「楽しい講座だったな」と振り返っています。
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【この記事を書いたメンバー】
広報部 技術広報課 すみ♪
趣味はエレクトーンと洋裁。
ここに宇宙開発と書けるようにがんばります。