あけましておめでとうございます。
2023年も、超小型人工衛星「RSP-02」の開発は続きます。

新年初回となる今回は、“人工星座”を実現するというミッションには欠かせない子衛星についてお届けします。

子衛星のこれまで

子衛星はデザインと機能の両面で検討を重ね、進化を続けています。
初期のデザインでは、丸ごと透明な子衛星でした。

透明なプラスチックで基板や電子を閉じ込めたような姿です。
スタイリッシュでかっこいい超小型人工衛星から放出されるなら、子衛星だってかっこよくなければ!です。

<写真:透明な子衛星の模型>

イベントで模型を展示していると、ありがたいことに「おしゃれですね」と声をかけていただけることもあり、メンバーは嬉しく思ったものです。
そんな、デザインファーストで検討された透明な子衛星ですが、実際に宇宙空間に届ける超小型人工衛星を開発している以上、機能も備えていなければなりません。

宇宙空間では、目に見えない宇宙放射線が飛び交っています。
放射線はもちろん人体に有害ですが、電子機器へも動作不良等の重大な影響を及ぼします。
放射線を大幅に遮蔽してくれる親衛星の中から宇宙空間に飛び出す子衛星が、どの程度放射線に耐えられるのか確認するため、2021年に第一回放射線試験を行いました。

<写真:アルミカップの子衛星>

放射線試験で利用した子衛星です。
試験なので、お弁当用のアルミカップで制作したもの(これはこれで可愛いです)。
このときの放射線試験では、LoRaモジュールや温度センサーに異常が認められました。

第一回放射線試験の様子はこちら

この結果を受けてデザインと部品の再検討を行い、子衛星の半分をアルミニウムで囲む形へと進化しました。
アルミニウムに囲まれた部分にLoRaモジュールを配置するようにし、温度センサーは放射線耐性があると思われる別製品への変更を行っています。


<写真左:改良版子衛星モデル 写真右:改良版子衛星の内部イメージ>

透明部分:透明プラスチック製(電池、LEDを配置)
不透明部分:アルミニウム製(基板、テザー接続部を配置)

第二回放射線試験

改良版の子衛星に対する放射線試験は、昨年となる2022年11月に実施しました。
半分がアルミニウムに囲まれた子衛星を試験するため、角度を変えた実験を行います。

ひとつは透明なプラスチックの先端から放射線を受けた場合「A」、もうひとつは子衛星を立たせて真横から放射線を受けた場合「B」です。


<写真:放射線試験イメージ>

放射線試験は前回同様、東京工業大学の施設を使用させていただきました。
今回は「RSP-02」と並行して開発作業を進めている「RSP-03」との合同テストです。
本当は希望者全員で立ち会いたいところですが、立ち入り可能な人数が限られているため、実際に中に入るメンバーに託す形となりました。


<写真:放射線試験の様子>

合同試験ということで、試験したい部品も大量! 放射線源をぐるりと取り囲む形になっています。
その中で、子衛星は空中に浮かせた状態で挑みました。
写真ではわかりにくいですが、拡大写真の下に角度を変えた子衛星も配置しています。
この状態でセットして照射開始から終了までの4時間、放射線を浴び続けることになります(照射設備の操作は、施設の担当者の方に実施いただきます)。
試験に立ち会うメンバーは、定期的にログの取得状況などを確認したり打ち合わせ等を行ったりして、時間を過ごしました。

今回の子衛星の試験としては、親衛星から放出されてから1ヵ月間程度は宇宙空間に耐えられることを確認するためのものでした。

……が、結果は残念。
試験終了後すぐに判明したこととして、アルミニウムで放射線を遮蔽していたはずのLoRaモジュールが起動しなくなりました。
これは、動作異常を起こした前回よりも悪い状況です。
温度センサーは、そもそも温度センサーを読むためのマイコンが起動しないため、温度センサー単体での結果の調査分析を行いました。

幸い、温度センサー単体としては機能していたことが判明!
ほんのちょっと、前回から前進できたと思うと救われます。

子衛星のこれから

今回の放射線試験の結果を受けて、問題点を分析、対処方法の検討、改良を進めていきます。
また今後は、子衛星の放出機構も含めた放出試験も行う予定です。親衛星から飛び出して宇宙空間で人工星座を形作るためには、欠かせないポイントです。

理想と現実の狭間には試行錯誤の道程があるけれど、「RSP-02」は開発を止めません。
引き続き、一歩ずつ進めていきます。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

開発メンバーは随時募集中です。
参加はこちら
https://www.rymansat.com/join

それでは、次回の進捗もお楽しみに。

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「宇宙に瞬く星々を多重音のシンフォニーとして地上の人達と楽しみたい!」
https://readyfor.jp/projects/rymansat5

RSP-02と同時開発のリーマンサット4機目「作曲演奏衛星」RSP-03、2022年1月16日からクラウドファンディングはじめます(2月28日まで、All-or-Nothing方式)。
皆さまのご支援をどうかよろしくお願い致します。

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【この記事を書いたメンバー】

広報部 技術広報課 Akko.M
海外の宇宙科学番組が好きすぎて、偏った英語を習得中。スイーツと珈琲と星空図鑑があれば幸せな妄想家です。


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