リーマンサットRSP-03開発メンバーのMです。
最終回となる5回目は、放射線試験の結果を紹介したいと思います。
連載目次
第1回 人工衛星と放射線の影響の歴史
第2回 放射線対策の研究動向
第3回 商用衛星・ロケットの放射線対策
第4回 リーマンサットの衛星の放射線対策
第5回 リーマンサットの放射線試験結果
※RSP-03で放射線試験を行うにあたって、各種文献をもとに調べたことを備忘録的に記しています。
内容が100%正確である保証は出来ませんので、あらかじめご了承ください。
第5回 リーマンサットの放射線試験結果
まずはRSP-03のメインミッションで使用を検討していたRaspberry pi用のCameraです。
Raspberry pi用のCameraは使用しているイメージセンサー違いで複数の種類があるので
それぞれ個別に試験をしています。
今回はカメラに蓋をして光を遮った状態で画像を撮影して、画像に含まれるノイズが放射線照射の前後でどう変化するか実験しました。
放射線照射前の画像を拡大
放射線照射後の画像を拡大
放射線の影響でノイズ(画像中の明るい点)が増えているのがお判りいただけるでしょうか?
画像を見比べただけだとわかりずらいので、画像の生データを白黒画像に変換して、ヒストグラムを作成してみました。
図中の青線が放射線照射前 / 赤線が放射線照射後になります。
X軸は画素の明るさを256段階で示しており、Y軸が出現頻度を示しています。
カメラに蓋をして画像を撮影しているので、出力される画像は真っ黒(=すべての画素の明るさが0)が期待値なのですが、カメラのイメージセンサーそのもののノイズの影響で明るさが0以外の画素も見られます。
肉眼で見るとほとんど差がないように見えますが、放射線の照射前後でノイズが増加していることが確認できました。
もう一つ試験結果を紹介したいと思います。
下記のグラフは3.3V出力のレギュレーターICに放射線を当てながら出力電圧の変化をモニターした結果です。
X軸が照射時間でY軸が電圧を示していますが、徐々に出力電圧が低下していることが観測できました。
開発メンバー内での議論の結果、この部品の劣化度合いは許容できないという判断になり、別の部品に変更することになりました。
RSP-03の開発では、このように宇宙空間での使用リスクがある部品を洗い出して衛星の信頼性向上を試みています。
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【この記事を書いたメンバー】
技術部 RSP-03 C系 / 電源系 M
旅とお酒が好きなエンジニア。東京在住、心は関西人