こんにちは。RSP-02 H系(熱・構造系)の玉置です。
今回のかわら版では、RSP-02の設計における構造シミュレーションについて紹介します。
構造シミュレーションとは?その役割は?
構造シミュレーションとは、設計した構造物の仕様(強度、重量、重心位置…)が要求事項を満たすか否かをコンピュータソフトウェア上で仮想的に検証する作業です。構造設計において、特に作業効率の向上に資する役割を持ちます。有効に活用すれば設計作業がものすごく楽になるありがたい存在です。
衛星に限らず何かしらものを設計する際には、その仕様が要求を満たすかを検証する必要があります。
検証する方法としては実機を作ってみて試験を行うという方法が確実ですが、この方法にはいくつかデメリットが伴います。例えば、時間や資材そしてお金が必要になります。また作ったものが要求を満たさなかった場合はせっかく掛けたコストが丸々無駄になるおそれもあります。
更に、長期のプロジェクトにおいては要求事項の方が変更されて再度検証が必要になるということも多々あります。したがって、設計作業において逐一実機を作成して検証を繰り返すということは少々非現実的です。
そこで役立つ別の方法が、コンピュータソフトウェア上で仮想的に検証を行う構造シミュレーションです。こちらの方法であれば実機を作成する必要はありません。構造を修正した際に迅速に検証することが可能になりますし、思いつき程度でも気軽にテストすることができます。構造シミュレーションを活用することで設計における修正・検証のサイクルを大幅に高速化することが可能となります。
作業の様子
RSP-02ではソフトウェアとしてFusion360を使用しています。作業はおおまかに以下のようになります。
①検証したいモデルの用意
H系をはじめ皆様に作製していただいたモデルがこちらになります。おなじみのデザインで、装飾が恰好いいですね!(パネル等の色味がいつもと異なるのはシミュレーション上の仕様ですよ)
②検証する条件を設定・実行
①で用意したモデルは複雑な形状をしているため、そのままシミュレーションに使うことは難しいです。そのため、シミュレーションに大きく影響を与えないと考えられる範囲でモデルを整形して計算を簡略化します。装飾が無い素の見た目も恰好いいですね(?)
・簡略化したモデルに対して、どの部分にどのような力を加えるかなどを設定します。
③結果の出力
コンピュータ上で計算を実行してしばらく待つと結果が吐き出されます。下図の結果では特に力が加わる部分が黄緑色で示されています(実際はきちんと定量的に数字も出力されます)。この場合、特に問題はなさそうに見えますね。ここまでボタンをぽちぽち押すだけでしたが、謎の達成感と仕事した感じがします。
④結果の妥当性の検証
ここからが構造シミュレーションの本番になります。先ほど出てきた結果が現実的に正しい結果かを検証します。また、そもそも②で設定したシミュレーションの前提条件が適切であったかも考慮します。
コンピュータは私達が指示した通りに計算してくれますが、計算の前提(②の設定)が不適切だと、もちろん不適切な結果が出てきます。そのため、最終的には私達自身で結果が正しいかどうかを確かめます。
例えば、いくつか計算の前提条件を変更して再計算を行ったり、複数人の観点で結果について議論したりして妥当性を確認していきます。
⑤シミュレーション結果が要求を満たすかの確認
シミュレーション結果が要求を満たしていたら構造設計が妥当だと期待できます。要求を満たしていない場合は適宜修正して再度シミュレーションを回していきます。
おわりに
以上が構造設計を支援する構造シミュレーションの紹介でした。
構造シミュレーション上で要求を満たすことが確認できた後には、最後の一押しとして試験機を作成して実際に試験を行い、最後は実機が宇宙に飛び立つという流れになります。
開発に関わった衛星が宇宙に飛び立つときが楽しみですね。
ここまで紹介記事を読んでいただき、ありがとうございました。
本記事を読んで構造設計あるいはリーマンサットの活動に興味が湧きましたら、是非ご参加ください!
一緒に衛星を作り上げましょう!
【この記事を書いたメンバー】
RSP-02 熱・構造系およびミッション系所属 玉置
興味の湧いた分野を乱歩する博士後期課程学生。
コーヒーと本屋さんの香りが好き。