ハモるんは超小型人工衛星「RSP-03」の愛称です。
サイズはなんと、手のひらサイズの約10センチ四方の立方体!
この小さな衛星が行うミッションのコンセプトは「星のシンフォニー(Stellar Symphony )」です。
地球を周回しながら、「宇宙空間で撮影した星の画像」と「衛星のハウスキーピングデータ(衛星の各パーツの状態を表す数値)」から多彩な音楽を作曲し、その音楽データを地上に送ります。

2023年9月のハモるん開発進捗についてお伝えします!

2023年9月のハモるんと03メンバー

RSP-03のアンテナ展開ができるようになりました。
またメンバーの一人が、14万円ほどのスペアナ(スペクトラムアナライザ:電波の周波数成分を測定する測定器)を個人で購入し、ウキウキと開発に使い始めました。

それでは、今月の各系進捗です。

”系”とは

リーマンサットでは、二つの意味で「系」という言葉を使っています。
①何らかの機能を持つ仕組みのこと。
②衛星開発プロジェクトを行うために、機能や役割ごとに技術部内で分かれているグループのこと。
ハモるんでは、ミッション系や姿勢制御系、地上局系など、現在10のグループに分かれて開発を行っています。このグループを”系”と呼んでいます。

それでは、リーマンサットでの衛星開発がどのように行われているのか、ハモるんの開発各系ごとにご紹介します。

M(ミッション)系

・地上局システムでECHOコマンドを受信すると「UNKNOWN」表示となっていたが、送り元ポートが間違っていたことが判明したため、正しい表示「ECHO」にできた。
ECHOコマンドは地上局から送られていた内容をそのまま地上局にオウム返しするコマンド。
地上局から受け取ったECHOコマンドを送り返す際には、パケットの先頭部分に送り元の情報(この場合はMBOC)を付加する必要があるのだが、それをMOBCが設定するのを忘れていた。そのため地上局側からすると、誰から送られたのかが判断できないために、”UNKNOWN”と表示していた。

送られてきたデータ

地上局からECHOコマンドでこのバイト列を送信されてきたので、MOBCは同じデータをそのまま送り返している。
・ECHOコマンドをベースにdigitalkerコマンドを実装中。
・作曲4パターンのうち、3つのパターンを実装した。
・通信系とI2Sオーディオ出力仕様について調整(モノラル出力、サンプリングレート決定)。
・ミッションシステムプロセス間の結合テストにむけて環境構築中、またプロセスの起動方式について検討中。2023年9月時点での起動方式はこちら。

・衛星が撮影した星の星座を特定するための、赤経赤緯取得テストコマンドを作成。
・デジトーカ音声と曲合成について対応。デジトーカでしゃべっている声と曲の合成したサンプル音源を試聴した。思っていたより良い出来。
リアクションホイールを動かして指定の星座に向かせたいため、A(姿勢制御)系と状況を共有。
M系では、2023年9月現在では姿勢が安定した状態で写真を撮影することを実装。

C&DH(コマンド&データハンドリング)系

・AM(姿勢・ミッション系)FM(※1)基板の、Raspberry Pi まわりの単体テスト完了。
・TC(通信・C&DH系)テストベンチ(※2)基板の、フラッシュの動作確認成功。
・テストベンチにて、電源基板に接続された各太陽電池面の有効・無効化、バッテリー常時通電機能の有効化が確認できた。
※1 FM:フライトモデル、Flight Model。人工衛星に搭載して実際に宇宙に行くモデル
※2 テストベンチ:地上試験用の衛星モデル

Raspberry Pi の接続が完了したAM-FMボード

・FM用電源基板の単体試験完了。予備3枚にコネクタを追加実装したので、10月以降に予備3枚の動作確認まで動作完了予定。
・OBCテレメトリ収集機能を作成。

T(通信)系

・オーディオ系の音量検を検討。M(ミッション)系のRaspberry Pi とT(通信)系無線機の間のI2S I/FについてM系と調整実施。Raspberry Pi からは16bit、48kHz、モノラルで出力。テストベンチで疎通確認実施、問題なし。
・GMSK送信の占有帯域幅について、メンバーがスペアナを個人購入したのでお試しで測定してみた。免許申請上は15kHzのところ9kHz程度だったので、問題なし。

スペアナの画面

・周波数申請は、外国からの異議申し立て待ち期間。いくつか問い合わせあり。
・AFSK送信について、マイコンからのDAC出力波形に問題がありそうなので調査中だったが、動作確認ができた(FM送信→市販無線機TH-D72で受信)+FM用プリエンファシスフィルタ実装

市販無線機TH-D72のターミナル画面
iPhoneのアプリでもデコードできることを確認した

・TC(通信・C&DH系)のFM基板の改版を検討。できればしたくないが、改修箇所が増加してきたため、信頼性とのトレードオフで改版の可能性を検討。改版する場合、製造と試験のスケジュールから9/末に改修内容の確定が必須のため9/末に妥当性を判断する。
・BBM(※3)基板の量産とHW定数の調整や改造を行った。
・PLLのLockDetectの動作確認を行った
・FM送信のチューニングのための準備をハードウェア、ソフトウェアともに行った
・FM送信フィルタの速度改善を進めた
・受信感度を確認する準備を行った
※3 BBM:ブレッドボードモデル。Bread Board Model、試作試験用のモデル。

AFSKが上手くいって喜んでいるT(通信)系の人々

P(電源)系

・C&DH系と一緒にテストベンチで電源基板の動作確認実施中。
・9月後半~10月あたりでそろそろ太陽電池基板をAssy(基板に太陽電池セルを接着+半田付け)しようと計画中。

A(姿勢制御)系

・A系が関係しているシーケンスの、作成と関係する系(A, M, C&DH)で確認・共有を行い、A系で必要な機能、コマンドの再確認と今後のタスクの洗い出しを行った。

H(熱・構造)系

・安全審査対応継続中。
・展開前のアンテナを固縛するダイニーマをいい塩梅に縛るための長さを見出すのに苦労している。作業手順はもうちょっと検討が必要そう。
・ダイニーマの保持解放機構について、ジグの試作とそれの検証を工場で行った。
・アンテナ固縛して1週間放置して緩みが発生しないかをテスト。
・テストベンチからアンテナ展開させることに成功した。

G(地上局)系

・運用システム開発については、運用システムのM系コマンド、C&DH系コマンドの実装に着手した。
バッチ画面のレイアウト、実装を見直した。運用システムに取り入れる項目や必要な機能について改めて確認した。
・無線送受信機能開発については、SDRによる受信確認を行うため、受信に適した運用中の衛星について話し合いを行った。
9/末のマイルストーンとしてはT(通信)系の結合試験ができるところまでだったが、できていない。

次の3系は、開発の系ではなく広報の系です。RSP-03は広報に関する系も内包しています。

D(デザイン)系

・RSP-03 の+X面のグッズ化について検討。
・ポスター、アートカード等広報グッズの文言変更に対応。

X(外部公開)系

RSP-03の愛称を募集。
候補は「ゆらぎ/ハモるん/センリツ/ステラシンフォニー/03dy(サンディ)/Stella/SONATA/ステラシンフォニー/MuseSat/NEIRO/アマデウス/kanade」。
お名前決定に至るまでの話はこちら→「超小型衛星RSP-03の愛称が決定しました!」

F(ファンディング)系

RSP-03グッズたち

五反田 宇宙ミュージアム@品川区立五反田文化センターでのリーマンサットブース「リーマンサットストア」での物販に参加した。

以上、2023年9月の開発進捗でした。
来月のハモるん開発記もお楽しみに!

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開発メンバー、広報として一緒に盛り上げていくメンバーも随時募集中です。


【この記事を書いたメンバー】

広報部 オウンドメディア課 &RSP-03外部公開系 トモエ モエ
リーマンサットCBO(C:最高 B:ビール O:責任者)
好物はビールと焼肉


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