※ 本記事は2024年4月時点の作業進捗記事です。

こんにちは、RSP-03 技術部のなすです。
開発もいよいよ大詰め!
振動試験に向けて衛星筐体の組み上げが進んでいるRSP-03の開発記録です。

今回は、「コーティング」(コンフォーマル・コーティング)の様子をお伝えします。
※コンフォーマル・コーティングとは密着させるコーティングという意味があります。

 

宇宙空間でもちゃんと動くように…基板を保護する「コーティング」が必須

これはプリント基板に樹脂を塗る作業で、防湿・防塵をするために行われます。
また、(こんなことはあってはいけないのですが)製造時に隠れてしまったはんだくずや線くずなどの導通物が打ち上げ時の振動などで出てきてしまい、宇宙空間で漂ってショートするのを防止するために基板表面で抑え込む意味もあります。

コーティング対象の3枚の基板

 

メンバーの武井さん(奥)に指導してもらいながら作業しました!

ここからは実際の作業のようすを写真を交えてお伝えします。

 

1日目…プレパレーション作業

この日は3つの作業を行いました。

  1. 基板のシールド作業
  2. プリント基板をIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄
  3. 必要箇所をマスキングする

1.基板のシールド・接着作業

まず、準備の準備として、基板についている配線を動かないようにしっかり固定したり、
カバー部分やコネクタを接着剤(スーパーX)で固着をしました。

 

接着剤をつま楊枝で少しずつ乗せてゆきます。

通信基板のシールドカバーを接着剤で固定する

接着剤はいったんマスキングテープのうえに出して使う。塗り終わったあともこのまま取って置き、硬化の具合がわかるようにサンプリングを必ず行う。すぐに捨てないこと!(必須事項)

 

2.プリント基板をアルコールで洗浄

プリント基板に残ったフラックス(主にはんだに含まれる)や基板および部品に付着している水分や油脂類を除去します。
IPA(イソプロピルアルコール)に浸漬(しんせき)し、液中で揺らすように洗浄します。

バットにIPAを貯め、1分程度基板を入れて少しゆする
イオナイザーを使って静電気を除去しながら作業した
ハンディタイプの電動エアダスター(ブロアー)を使用して、全体を乾燥させる。特にコネクタの内部などはすべて乾くようにしっかり風を当てる

これ以降の作業では、素手でプリント基板に触れなくなります。必ず手袋着用となります!

 

3.必要箇所をマスキングする

コーティング剤をのせない部分には、マスキングテープをあらかじめ貼っていきます。

マスキングテープを1cm角に切って…
筐体への接地点やコネクタ端子などの導通が必要となる箇所の上にテープを貼って、コーティング剤がのらないようにする
あらかたマスキングが終わった基板たち

1日目の作業はここまで!
なお、手順書には恒温槽での乾燥工程がありましたが、作業場所の都合でこの日は乾燥までは行いませんでした。

 

2日目…コーティング作業本番

2日目はいよいよコーティング作業本番!
続きは下記の作業を行いました。

  1. 乾燥炉で 65℃ 2時間乾燥させ、防塵して自然冷却
  2. スプレーまたは筆塗りでコーティングする
  3. マスキングを除去する(デマスキング)

作業者3名+先生1名でいざ開始!

 

4.乾燥炉で 65℃ 2時間乾燥させ、防塵して自然冷却

恒温槽で基板を乾燥させました。

恒温槽でしっかり乾かされる基板たち

 

5.筆塗りでコーティングする

今回、コーティング剤は、以前開発した衛星のRSP-01でも使用したAegis Coat-WOP-(野田スクリーン)を筆塗りで使用しました。

Aegis Coatは基板の絶縁・防湿・防錆によく使われるコーティング剤。常温で速乾性があるため、使いやすい

本番のコーティングを始める前に、手近にあった基板でコーティングの練習をしました。

基板のフチも忘れずに塗る!

コネクタの中にコーティング剤が入らないように注意する

ひと通り練習を終えたら、いよいよ本番の基板のコーティング作業へ!

筆にコーティング剤をつけて、塗り漏れがないようにしっかり塗る
筆が届かないところには、しっかりマスキングをしたうえでスプレーでコーティング剤を吹く

6.マスキングを除去する(デマスキング)

基板の表面・裏面、淵にもしっかりコーティングを施し、自然乾燥させたらコーティングは完了!
最後に、マスキングテープをすべて剥がします。

ぺりぺり

以上で、コーティングの作業はすべて完了!
おつかれさまでした。

コーティング作業が完了した基板たち

作業してみた感想

宇宙に行ったらもう二度と触ることのできない基板が、
打ち上がったあともずっと変わらず動くようにするには
このように細かいケアが必要なのだな…ということに改めて気付かされました。

無事に動きますように! 打ち上げが楽しみです!

 

参考:コーティング作業の手順

あらかじめ共有された手順書は以下のとおりです。

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RSP-03プリント基板コンフォーマルコーティング工事手順

■ 全般注意事項
なるべく化繊の衣料品は身に着けないこと。静電気発生の原因になります。
全作業「リストストラップ」や「イオナイザー」が使える環境で行うのが望ましいです。

■ 準備日(プリ・コーティング)の作業

1.プリント基板をIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄する
1分以上IPAに浸漬し、液中で揺らすように洗浄する
必要であれば面相筆や小型の刷毛を使用するが抜け毛が残らないよう注意する
※ 換気注意 火気厳禁

※ 以降の作業は素手ではプリント基板を触らないこと

2.あらかじめ65℃に設定し温めた恒温槽に20~30分乾燥させる
※ オーブン(恒温槽)がないためブロアとヒートガンで対応します
エアガンやブロアなどで軽くIPAを飛ばしてから、恒温槽(乾燥炉)に入れる
※ 基板の表面に多くの結露が見られるときは、再度IPAに浸漬させる
※※ 換気注意 火気厳禁

3.必要箇所をマスキングする
コネクタなどの接点がある部品
可変部品(ポテンションメータ トリマコンデンサなど)
機械的可動部
その他設計者が塗り逃げを指示した箇所

■ 本番 工場(※リーマンサット開発スペース)にて行う作業

4.乾燥炉で 65℃ 2時間乾燥させる

5.2時間経過後、防塵し自然冷却する
推奨環境 気温 18~24℃ 湿度 45~55%

6.静電気に注意し、スプレーまたは筆塗りでコーティングする。基板の淵も忘れずに
※ 換気注意

7.常温で自然乾燥
クリーンブース内推奨
乾燥時間はコーティング剤の説明書きによる
必要であれば乾燥炉で乾燥させる

8.マスキングを除去する(デマスキング作業)

以上で終了 お疲れさまでした (^^)/

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【この記事を書いたメンバー】

技術部 RSP-03 通信系 / 地上局系 なす
リーマンサット歴8ヶ月になりました。最近は毎晩クレープを焼いています。


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