11月25日、リーマンサット・プロジェクト定例会と同時進行で、開発中の超小型人工衛星、RSP-01のCDR(Critical Design Review、詳細設計審査)を行いました。
5月に行ったPDR(Preliminary Design Review、基本設計審査)同様、開発の次の段階へ進むために必要な、重要な審査会です。
RSP-01についておさらい。
・メインミッション:自撮り撮影
・サブミッション:機械学習による画像選定、チャット、リアクションホイールの動作検証
10月に地球周回軌道に投入した”RSP-00”に続くリーマンサット・プロジェクトの人工衛星です!
【当日のタイムスケジュール】
10時05分〜10時10分 開会
10時10分〜10時15分 目的&審査対象&審査員紹介
10時15分〜10時55分 ミッション系
10時55分〜11時35分 コマンド系
11時35分〜12時15分 サブミッション(画像)系
14時00分〜14時50分 姿勢制御系(リアクションホイール含む)
14時50分〜15時30分 通信系
15時30分〜16時30分 構造系
16時30分〜17時10分 熱系
17時10分〜17時50分 サブミッション(チャット)系
17時50分〜17時55分 審査結果
17時55分〜18時00分 閉会
朝から夜までぎっしり詰まったスケジュールですね!
しかし宇宙に持って行く前にこれ以上ないほど完璧にしあげなくてはいけない宇宙開発、手堅く進める必要があります。CDRを無事に終えなければフライトモデル(宇宙へ実際に行く実機)の開発に進むことができません。
それを心得ている技術部メンバーは、徹夜で作成した詳細設計書をもとに、白熱した議論を行いました。
CDRの審査員には、10月に宇宙空間へ放出したRSP-00の開発者が多数参加しており、
「ハードに完全にまかせるのではなく、故障した際の冗長性をソフトでも持たせたほうがいいのではないか」
「宇宙へ送り出してしまうと地上からできないことがたくさんあるので衛星自体の判断でリトライ可能にできるようにしておいたほうがいい」
など、地球周回軌道へ送り出した知見や反省を生かしたコメントが飛び交いました。
またRSP-00にはなかった「サブミッション画像処理系」の機械学習画像について、具体的にどういう画像を用意しているのかなど、細かく質疑応答が行われました。
結果、詳細設計が認められ、CDRはクリア!
2019年度の打上げに向けて、 次の段階へすすみます。
さて、CDRについてのご報告でしたが、ここで宇宙機器の開発システムについて、少し解説します。
今回私達が実施したCDRとはCritical Design Review(詳細設計審査) の略で、今まで開発してきたものを全体で評価する機会の1つです。他にもこういった機会はMDR(Mission Definition Review : ミッション定義審査)やPDR(Preliminary Design Review : 基本設計審査)というものがあったり、自分たちの開発が確かなものかをみんなで評価しながら段階的に開発を進めます。
そもそも宇宙で動くものの開発は、その具体的な方法にこそ宇宙機器ならではのものが多くあります。宇宙に打ち上げたら人の手が加えられないので、そのリスクマネジメントは特別です。また地上ではありえないような温度や放射線にさらされるため、その特殊な条件を特別な試験環境で試さなくてはいけません。しかしその開発プロセスは、多くのものづくりと大きく変わりません。
プロジェクトの運用にはいくつか手法がありますが、リーマンサットではPPP(Phased Project Planning : 段階的プロジェクト計画)を取り入れています。この手法はNASAがアポロ時代に人工衛星開発を行う時にも採用した手法で、開発をフェーズで段階的に分けて何回も評価しながらプロジェクトを進めていきます。プロジェクト規模が大きかったり時間のかかるものだとこのフェーズは増え、また各フェーズごとに違うモデルを活用して運用することもあります。
RSP–01はすでにMDRとPDRを実施しました。MDRでは主に構想や目的をもとに概念設計を固め、その評価をしました。PDRではその概念設計を元に、BBM(Bread Board Model : ブレッドボードモデル )の作製をし基本設計の評価をしました。
詳細設計の評価をするCDRを終えたここからは、モノ主体による開発のフェーズです。
まずEM(Engineering Model : エンジニアリングモデル)の製作を行います。そのEMの試験結果によって製作方法を見直しつつ、FM (Flight Model : フライトモデル)を製作します。そしてFMの試験を終えることによって打ち上げに繋がっていきます。
「自撮りする衛星を作ろう」の言葉だけでフライトモデルまで全部作れるというわけでは当然ありません。他のものづくりではありえないような条件をクリアするチャレンジングな開発なのに許される失敗は最終的にすごく少なくないといけない人工衛星開発。そのためには手戻りをいかに少なくしながらも、順々に着実にうまくいっているかを確認することが重要なのです。
小さなキューブサットといえどその中には姿勢を感知するセンサーがあり、ミッションを遂行するためのアームがあり、地球と通信するためのアンテナがあり、それらを適切に動かすための電気を供給する電源と制御するソフトウェアがあり、また宇宙環境でその全ての機能を保証するための熱設計・・・などなど
多くの要素を開発しなければならず、一人ではとても難しいものです。そのため役割分担をするのですが、足並みを揃えて最後には全てを合わせて1つの”モノ”にしなければいけません。それぞれが開発したものが全体設計に適うもので、また他のものにとって不都合ができていないか段階的にみんなで評価し合いながら進める必要があります。
その重要な機会がPDRやCDRなどの”設計審査”と呼ばれるイベント。設計審査は開発者全員が足並みを揃えるために欠かせない機会なのです。
以上、技術広報課の岩渕と細田がお送りしました!
リーマンサットの広報部技術広報課では、このような技術寄りなことを皆さんに広く伝えるような記事の作成等も行なっています☆
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