リーマンサット・プロジェクトでは、多くのメンバーが多岐にわたる活動をしています。
その中でも我らがローバーチームにスポットを当てました。
今回はローバーチームの鶴見さん、松浦さん、篠原さんにインタビューを行いました。熱い想いを語ってくれましたので、ご覧ください。ローバーチームのとりこになるかも!?
<聞き手:技術広報・熊谷>
熊谷:本日は宜しくお願いします。ローバーチームについてお伺いします。
そもそもですが、ローバーとは何でしょうか?
鶴見:恐らく、厳密な定義はありません。車輪であることが必要条件だと思われがちだけど、そうではなく、移動して探査するものをローバーといいます。移動機構を持つ探査機の総称ですね。
熊谷:何を目的として探査するのですか?
鶴見:一般的には資源とか科学探査が多いのですが、自分たちは地面に物を植え付けることをしたいです。自分たちは「田植え」といってます(笑)。
熊谷:何を植えようとしているのでしょうか?
鶴見:植えるものは特に問いませんが、例えばビーコン(※注1)を植え付けるとローバーの相対位置がわかります。地中に物を植え付けることができるとその後応用が広がるので、まずは植え付けるということができるようにしたいです。
松浦:パワーショベルみたいに土を掘ってかき出すような機構をローバーに載せたいです。第一フェーズとして、ナスカの地上絵のように絵を描こうとしています。
鶴見:このミッションは技術的にも面白いです。というのも、地盤の掘削に耐えうるハードが備わっていることと、地上絵が描けるように自分の位置を認識して走行するソフトの両方を満たしていないと描けません。
熊谷:中々ハードルが高いですね。
鶴見:そうですね(笑)。
松浦:第二フェーズとしては、地面を掘ったり、植えたり、何か物を刺したりなど、用途に応じてミッションモジュールを取り換えて動くような基本機能を備えるローバーにしたいです。
(写真:左から鶴見さん、松浦さん、篠原さん)
熊谷:メンバーの数はどのくらいいますか?
鶴見:様々な形でプロジェクトに関わってくれる人がいますが、コアな開発メンバーとしては10人前後です。
熊谷:どこで活動されていますか?
鶴見:カフェでやることもありますが、基本的にはリーマンサットのメンバーが働いている町工場をお借りして活動しています。
熊谷:どのくらいの頻度で活動されていますか?
鶴見:全体定例での集まりと、土曜日か日曜日にもう一回集まっていますが、今後は月にもう一回増やす予定です。
熊谷:なぜ回数を増やそうとしているのでしょうか?
鶴見:今年来年と具体的なマイルストーンを設定し、開発が加速してきたので集まる機会を増やせれば、と思ってそうしました。
熊谷:達成したい目標をお伺いします。
鶴見:月にローバーを送りたいです。ローバーとラジコンカーの違いは宇宙に行ったかどうかだと思っていて、例え作っても宇宙へ行かなければやっぱりラジコンなので、その違いは大きいと思います。かといってすぐにロケットを打ち上げるための大金を用意して、ローバーを載せてって訳にはいかないので、まずはそれに向けて技術を蓄積しています。遠い先になるかも知れませんが、いつかは宇宙に月に行って田植えをしたいです。
熊谷:ローバーのどの部分の開発に力を入れていますか?
篠原:最終的に月面で動くということを考えると、自律走行できるような開発を念頭に置いていますが、いきなりそこまではハードルが高いので、まずは大会とかで行われるような、目標地点に向かって走行できるようなものから徐々にステップアップしていきたいです。
熊谷:開発のきっかけを教えてください。
鶴見:お酒の場で、リーマンサット技術部の嶋村さんに何かやりたいことないの?って尋ねられたとき、その場の勢いでローバーをやりたいってカミングアウトしたら、それやっちゃいなよってなって(笑)。その後、なんでもプレゼン(※注2)で発表するためのスライドが嶋村さんから送られてきて、やるという流れになりました。
熊谷:これまでの開発で大変だったことはありますか?
鶴見:月にローバーを送ろうって言っても、何から始めていいかわからなかったことです。キューブサットだったら、大きさが10cm立方で、ここにレールを付けてとか、重量制限がいくらだとか、規定がありますが、そういうのがないのでやりにくいですね。
松浦:お金があればいろいろとできますが、それがない中でオリジナリティを出すのが難しいです。掘削機構にしても、掘るのか、それとも杭を打ち込むのか、そういうことを自分たちで決めていくことからやっていかないといけないです。
(写真:ローバーチームの開発風景)
☆リーマンサット・プロジェクトについて
熊谷:リーマンサットに入ったきっかけを教えてください。
鶴見:宇宙のフリーマガジンを発行する学生団体に入っていて、そこの人との繋がりでリーマンサットを知りました。そこではものづくりはしていませんが、宇宙に行くものを作りたかったので加入しました。
松浦:宇宙関連の仕事をしたいと志したのですが、希望が通らず、もやもやしている日常が続いていました。そんな中、リーマンサットのことをホームページで知り、趣味から宇宙と繋がりたいと思いリーマンサットの活動に参加し始めました。
篠原:リーマンサットの知り合いに誘われて入りました。最初は宇宙開発するぞっていう熱意はありませんでしたが、もともと学生時代からロボコンに参加したり、ロボットを作ったり、動くものを作るのが好きでした。それを宇宙に送ろうとしているすごい人たちがいることをここに来て初めて知り、それから自分でやってみたくなって、それが今でも続いているという感じです。
熊谷:もしローバーチームに参加するとしたら、どのようなスキルがあると望ましいですか?
松浦:スキルより長くやれる人の方が重要です。みんな手探りでやっているので、プログラミングができるとか、機械設計ができるって人でなくても、わからないならわからないなりにやっていこうと思えるような前向きな人がいいかなと。
篠原:実際に作ってみようとか、試してみようとか、トライしてみようというモチベーションがあったり、あるいはわからないことをどんどん勉強していこうみたいなパッションがある人がいるといいです。
鶴見:何にも知らないけど、やる気だけある人の方が、むしろいいですね(笑)。そういう人の方が続いてる気がします。
熊谷:未経験でもウェルカムなんですね?
鶴見:初心者がこんなに歓迎される環境はないですよ(笑)。
篠原:一緒にやっていこうって人がいいですね。
☆最後に
熊谷:ローバー開発に携わりたい人へのメッセージをお願いします。
鶴見:「地球周回を飛び出そう!」
熊谷:今日はお忙しいところありがとうございました。
(注1)位置情報のために無線信号を発するデバイスの総称。ここではローバーがビーコンの信号を受信することで自分がどこにいるか推定できる。
(注2)リーマンサットの月一の定例会では、希望すれば5分間自由に発表する機会が設けられています。メンバーであればなんでも自由に発表できます。テーマは宇宙以外のことでもOK。
リーマンサット・プロジェクトではローバー以外にも多くのメンバーが活動しています。少しでも興味を持たれた方はこちらをご覧ください。
【この記事を書いたメンバー】
広報部 技術広報 熊谷英敏
昨年秋にリーマンサット・プロジェクトに加入。いつの日か自分が開発した人工衛星が打ち上がるのを夢見ている。実はかなりの大食い。